2013年4月2日星期二

Access Accepted第357回:Epic Gamesキーパーソン,マーク・レイン氏にインタビュー。「クリフならいつでも


 「Gears of War」シリーズなどのゲームタイトルだけでなく,「Unreal Engine」でも欧米ゲーム業界で強い存在感を示すEpic Games。創立20周年を迎えた2012年には,新たなゲームエンジンである「Unreal Engine 4」を発表するなど,常に注目の的となっている。そんなEpic Gamesの歴史をつぶさに見てきた同社のキーパーソン,マーク?レイン(Mark Rein)氏にインタビューする機会を得たので,その模様をお伝えしたい。レイン氏の口から語られたEpic Gamesの過去と未来とは。


20周年を迎えたEpic Gamesとは?


2012年は,Epic Gamesが誕生してからちょうど20年となる節目の年だ。1998年に「Unreal」を開発し,そのゲームエンジンのライセンスをビジネスにしたことで,今やゲーム業界にはなくてはならない存在へ成長した
 Epic Gamesと聞いて,シリーズを思い浮かべる人は多い。また,最もポピュラーなゲームエンジン「Unreal Engine」を連想する人もいるはずだし,エグゼクティブプロデューサーとして同社のゲーム開発に携わる業界の有名人,FF14 RMTクリフ?ブレジンスキー(Cliff Bleszinski)氏の姿を思い出す人もいるだろう。さらに,ゲーム技術に興味のある人なら,同社の創設者で,プログラマーとしてUnreal Engineを開発するティム?スウィーニー(Tim Sweeney)氏の名前を聞くことも多いはずだ。

 単なるゲームメーカーではない,多様な顔を見せるEpic Gamesだが,ドラクエ10 RMT,忘れてはいけないキーパーソンが一人いる。それが,同社の副社長としてビジネスまわり一切を取り仕切る,マーク?レイン(Mark Rein)氏だ。ゲームやゲームエンジンの開発に直接関わっているわけではないものの,同社が「Epic MegaGames」の名前で創業して以来,スウィーニー氏やブレジンスキー氏らと苦楽を共にしてきた人物である。
 今回,やんちゃっぽい風貌と率直な話しぶりで知られるレイン氏にインタビューする機会を得たので,その模様をお伝えしたい。が,まずその前に,Epic Games自体について簡単に紹介しておこう。

 Epic MegaGamesが日本のゲーマーにも知られるようになったのは,やはり1998年にPC向けにリリースされたFPS「Unreal」と,その翌年,オンライン対戦にフォーカスして発売されたからだろう。
 Epic Gamesはその後,UnrealシリーズのゲームエンジンであるUnreal Engineを開発用のミドルウェアにするというライセンスビジネスを開始し,1999年から2000年にかけて,「Rune」,そして「The Wheel of Time」などのタイトルに使用されることになった。
 ゲームエンジンのライセンスビジネスはEpic Gamesが初というわけではなかったが,Unreal Engineはさまざまな理由から多くのゲームメーカーに使われるようになり,現在,公表されているものだけで300作を数える。

 バージョンアップされるにつれてUnreal Engineは対応プラットフォームを次々に増やし,現在ではMac,iOS,PS Vita,Android,さらにはFlashやWii Uもサポートしている。ゲームのジャンルもFPSに限らなくなり,またその見かけも,Unreal Engineを使用していることを説明されなければ分からないほど多様になった。

新エンジンである「Unreal Engine 4」は,空間に存在する何百万というパーティクルの一つ一つに光や影の要素を持たせられるという高い性能を誇る。詳細については,を参照してほしい

 2009年からはUnreal Engine 3をベースにした開発キット「Unreal Development Kit」を無料公開し,インディーズ系の開発者には販売後にロイヤルティを支払ってもらうというプランも提供された()。例えば,注目を集めるFree-to-PlayタイプのオンラインFPSも,この無料開発キットを使って制作されており,ゲーム開発におけるUnreal Engineの存在感は大きなものになっている。

 2012年は,Epic Gamesの設立20周年となる記念すべき年であり,次世代コンシューマ機をターゲットにしたなど,次の20年に向かった動きも見えてきた。そんなホットなEpic Gamesのレイン氏に,同社の過去から最近の動きまでをじっくり聞いてきた。


「クリフならいつでも喜んでお貸しますよ」


Epic Gamesの設立当時から経営に携わってきたマーク?レイン氏。直接ゲームやゲームエンジンを開発している人物ではないが,海外ゲームのファンなら一度は名前を聞いたことがあるはずだ
4Gamer
 今日はよろしくお願いします。レインさんは,日本では,とくにコアゲーマーによく知られた存在ですが,経歴について詳しく知っている人は多くないと思います。

マーク?レイン氏(以下,レイン氏)
 私がよく知られているって? ホントに?

4Gamer
 ええ,日本のメディアは,イベント取材では必ず関係者の写真を載せますから。

レイン氏
 確かに。私の写真を撮っているのは日本のジャーナリストが多いですね。

4Gamer
 レインさんは,id Softwareからゲーム業界入りしたとお聞きしました。

レイン氏
 ええ。id Softwareでの生活は短かったんですが,そのあとティム(ティム?スウィーニー氏)に出会って意気投合し,そのまま一緒に会社を設立したんです。今からちょうど20年前の1992年。まだ,彼が実家の地下室で「ZZT」を作って間もない頃ですね。その後,我々のためにゲームを作ってくれる若者を雇いましたが,これがクリフ(クリフ?ブレジンスキー氏)です。

4Gamer
 それから20年が経過して,今では傘下の開発スタジオを3つ,そして日本と韓国にもオフィスを置かれています。現在,ビジネスの拡大戦略を考えておられるのですか。

レイン氏
 いえ,べつに狙って開発スタジオを買収しているわけではないのですが,やはり見逃すには惜しい機会というのが時として訪れます。ダウンロード販売の気軽なゲームを作れるChair Entertainmentのときもそうでしたし,ポーランドでコアなゲームを作るPeople Can Fly,それから最近発表したImpossible Studiosもそうでした()。

4Gamer
 Impossible Studiosは,タブレット向け新作を担当することになっているんですね。

レイン氏
 ええ。Big Huge Gamesにとっては不幸な出来事でしたが,我々にとっては幸運だったと言えます。彼らは,38 Studiosの破綻後,まとまったまま独立する方法を探していたらしく,我々に「Infinity BladeのIPを利用させてくれないか」と打診してきたのです。それは,我々にとって望むところでもあったので,我々が開発中のInfinity Blade: Dungeonsをとりあえず担当してもらうことになりました。あそこは開発人数も多く,我々にはないノウハウも持っていますので,これからも新しいものを生み出してくれると期待しています。

大きな成功を収めた「Infinity Blade」を,Diablo風のクォータービュー?アクションRPGへと作り変えたのが「Infinity Blade: Dungeons」。現在,Epic Games傘下のImpossible Studiosが開発を進めており,2012年内にリリースされる予定になっている

4Gamer
 なるほど。ところでされていますが,目的はなんだったのでしょうか。

レイン氏
 そう,2010年の春でしたね。Epic Japan設立の目的はゲーム開発ではなく,Unreal Engineのライセンスビジネスの拡大や,そのサポートが中心になります。思っていた以上の成果が出ており,我々も非常に満足しているんです。

4Gamer
 確かに最近,Unreal Engineを使った日本のゲームが増えていますね。ちなみに,日本で発売されるゲームでは,何が気になっていますか。

レイン氏
 うーん。ホントいろいろあるんですけどね。やっぱりカプコンとニンジャセオリーのかな。発売されたばかりのなんかも,あの飛び抜けた感じはイイと思います。日本のゲームは,発想や雰囲気が面白い作品が多いですね。

レイン氏が,Unreal Engineを使った日本のゲームで最も気になるという「DmC Devil May Cry」 。開発元のニンジャセオリーは,以前もUnreal Engineのライセンスをしたことがあるため,相当なノウハウを蓄積していることが分かるだろう

4Gamer
 そういえば,ブレジンスキー氏も日本のゲームが好きらしく,3月のGame Developers Conference 2012ではをしていました。日本に行って(日本のメーカーの弱点の1つとされる)マルチプレイモードの作り方を伝授したいみたいなことも語っていたようです(笑)。

レイン氏
 クリフならいつでも喜んでお貸しますよ。Unreal Engineをライセンスしてくれたら,短い間だけ無料で貸し出すのもいいかな(笑)。

4Gamer
 それは,新しいビジネスになりそうですね(笑)。ところで最近,日本のゲーム開発が,とくに技術面で欧米に差をつけられているという声も聞かれますが,レインさんはどう思いますか。

レイン氏
 私はそうは思いませんね。どの業界でも,どんな才能を持った人でも「波」というものがあります。確かに,1980年代後半から1990年代にかけての絶頂期と比べれれば,日本のゲームのアメリカでのプレゼンスは低下しています。以前は日本で開発されたゲーム機が主流を占めていたために,開発キットが日本語化されていたとか,より早く開発を始められたりという状況はあったと思います。そのようにしてスクウェア(現スクウェア?エニックス)なりセガなり,カプコンなりがグローバルスタンダードを作ってきたわけです。アメリカのゲームメーカーの多くは,そこから多くのことを学び,それを取り込んでいきました。

4Gamer
 なるほど。

レイン氏
 アメリカの場合は,市場の広さだけでなく多様なプラットフォームが存在しており,多くの人がゲームを作るという土壌もあります。もちろん,それだけ競争も厳しく,その中で開発者は切磋琢磨され,各種サービスやオンラインモードなどの付加価値を生み出してきました。
 アメリカに比べて日本の場合,市場もプラットフォームもそれほど多様ではありませんから,相応のハンディがあるはずです。しかし,そんな状況でも世界市場で対等に渡り合えるのは,むしろすごいことだと思います。人口も市場規模もアメリカとは比較にならないのに,どうしてあれだけいろいろなものを作り出せるのか本当に不思議です。今は日本がアメリカのゲーム開発手法を貧欲に吸収していることも感じています。


「Fortniteは,普通のPCでも遊べる
『Unreal Engine 4』ゲーム」


4Gamer
 今年(2012年),「Unreal Engine 4」の詳細が公開されました。そのデモ,それから「Unreal Engine 3」ベースですが,2011年のデモなど,見ているだけで期待が高まってしまいます。あれらをゲーム化する予定はないんでしょうか?

レイン氏
 ゲーム化の予定はないですね。確かに「Unreal Engine 3」を発表したときには,Gears of Warを使ったテクノロジーデモを公開しました。そういうこともあって,ElementalやSamaritanが1つのゲームとして開発されることを期待するファンが多いのは承知しています。ですが,残念ながらその計画はないですね。
 我々は,ゲームエンジンの性能を最大限にお見せするには,ゲームコンテンツの一部を公開するより,専用の「ゲームに似せた」デモを利用したほうが分かりやすいと考えています。例えばSamaritanでは,非常に細かなキャラクターの表現が実現できることを証明していますし,Elementalではパーティクル効果やグローバルイルミネーションなどを紹介するという感じです。

Unreal Engine 4の記念すべき第1作となる「Fortnite」。夜になると闇の世界のクリーチャーが出てくる世界を舞台に,プレイヤーが廃材などを集めて基地や武器を作り,サバイバルするというカジュアル風味のCo-op専用タイトル。今回は,まだ公式に発表できないデモも見せてもらったが,マッチョなイメージが強いEpic Gamesには,かつてなかった作風だった

4Gamer
 なるほど。ところで,Unreal Engine 4の最初のタイトルはになるわけですが,これも新しいゲームエンジンのショーケースとして捉えて良いんでしょうか。

レイン氏
 FortniteはUnreal Engine 4の記念すべき第1作になるわけですが,ハイエンドPCを使ったテクノロジーのショーケースではなく,「普通のPCでも遊べるUnreal Engine 4ゲーム」がコンセプトになっています。PCでアクションゲームを普通に遊んでいる人なら,とくにアップグレードを行わなくても普通にプレイできますよ。Unreal Engine 4は,非常にスケーラブルなエンジンなのです。

4Gamer
 Fortniteは,これまでのEpic Gamesにはなかったようなゲームですね。内製のプロジェクトなんでしょうか?

レイン氏
 内部で制作しています。これまでの我々の作風とはまったく異なるでしょ? コミカルなグラフィックスや,プレイのしやすさを持っていて,4人のCo-opで楽しく遊べます。これまでの我々のゲームとは違った,非常にエキサイティングな作品になると思っています。

4Gamer
 リアルさではない,Unreal Engine 4の別の側面を見せるということでしょうか。

レイン氏
 それもありますね。ただ,現在は照明効果など,Unreal Engine 4の見た目ばかりが注目されていますが,インタフェースが洗練されて劇的に使いやすくなったスクリプトエディタ「Kismet 2」など,それ以外にも見てほしい技術はたくさんあります。
 そもそもFortniteも,ほとんどプログラマーを必要とせず,アーティストやデザイナーがKismet 2を利用して制作しています。このあたりは,一般のゲーマーがあまり気にしない部分ですが,ゲーム開発コミュニティにとっては非常に重要な武器になるはずです。

4Gamer
 なるほど。Fortniteは開発者にアピールする目的もあると。

レイン氏
 そうは言っても,グラフィックスも独特で,美しいゲームだとも思っています。遠景のぼやけた様子や,昼夜の移り変わり,そしてクリーチャーがドアを破って侵入してくるときの緊迫感など,Fortniteは見た目でも楽しめるゲームであるのは間違いありません。

4Gamer
 Fortniteの対応機種はPCだけですか。今のところ,パブリッシャやビジネスモデルも明らかになっていませんが。

レイン氏
 今発表しているのはPCだけですね。確かにパブリッシャもビジネスモデルアナウンスしていませんが,そのあたりは今後煮詰めていくことになります。

今回のインタビューでは触れなかったものの,現在People Can Flyが開発を進めているのが。最近はUnreal Engine 4ばかりが話題になるが,Unreal Engine 3世代のゲームの賞味期限もまだまだ切れてはいない

4Gamer
 Unreal Engine 4は,開発現場にどのようなインパクトをもたらすとお思いですか?

レイン氏
 現時点では次世代のコンシューマ機は発表されていませんが,これまで,新しいハードウェアが登場するたびに,開発にかかる費用や時間が大きくなっていました。開発ミドルウェアを提供する我々の大きな目標は,そうした費用と時間の両方を削減してもらうことです。現在のゲーム開発現場ではイタレーション(iteration)が繰り返されており,それが良いゲームを作るための鍵となっています。ですから,Kismet 2のような,プログラマーの助けを借りずに迅速にイタレーションを行える環境が提供されれば,より効率的なゲーム開発を行えるはずです。

4Gamer
 Unreal Engineは,iOS向けにも広がっているという印象ですが。

Epic Gamesは,インタビュー後の2012年9月6日に,ゲームエンジンの開発スタジオとしてワシントン州シアトルに拠点を設置すると発表している。シアトルと言えば,MicrosoftやValve,Nintendo of Americaが本拠地を置くゲーム業界のホットスポットだ。レイン氏自身はロンドンにも何度か足を運んでいるらしい……
レイン氏
 そうですね。iOSは我が社が大きく期待しているプラットフォームの1つです。やはり,のリリース以来,Unreal EngineがiOSゲーム開発のソリューションとして広く受け入れられたと感じています。
 また,我々はタブレット端末がさらに大きなシェアを獲得すると考えており,iOSだけではなく,Androidのサポートも始めています。Trendy EntertainmentのはHoneycombの承認を受けた最初のゲームとなりましたが,そのあとに,スクウェア?エニックスのや,ゲームロフトのといったタイトルが発表されています。Galaxy TabやNexus 7のようなタブレットでプレイできる,非常に美しいグラフィックのゲームになっていますから,ぜひ見てほしいですね。

4Gamer
 では最後に,Wii UとUnreal Engineの現状についても一言お願いします。

レイン氏
 Unreal Engine 3世代のミドルウェアはすでにWii Uで作動しており,Warner Bros. InteractiveのやElectronic Artsのなどが発表されています。セガの「Aliens: Colonial Marines」もウチのゲームエンジンですね。先ほどもお話したように,Unreal Engine 4はスケーラブルなエンジンですから,もしUnreal Engine 4のゲームをWii U向けに作りたいという希望があっても,技術的には問題なくできるはずです。

4Gamer
 分かりました。本日はどうもありがとうございました。



著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

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